第276章

村上美咲の元へ、突然、青木青から電話がかかってきた。

離婚して以来、この電話番号からかかってくることは久しくなかった。

時の流れはかくも早いものか。あれほど断ち切れないと思っていた相手のことなど、この短い月日の間、一度も思い出さなかったとは。

彼女は少し考えた末、通話ボタンを押した。

「何の用?」

青木青はひどく躊躇している様子で、しばらくもごもごと口ごもるばかりだ。

「言うことがないなら、切るわよ」村上美咲は、相手をいつまでも待っていられるほど辛抱強くはない。

「待ってくれ!」青木青が唐突に口を開いた。「一度会いたいんだ。話をしよう」

村上美咲は可笑しく思ったが、珍しく気を...

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